暑中お見舞い申し上げます
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


規模も勢力もそれはそれは大きな台風が、
なのに、ジョギングかのんびりとしたサイクリングといった
途轍もなく ゆっくりしたスピードで通過して。

  今年は割と早くから日本へ接近してるよね、台風。

  それでなくとも六月の末から猛暑が始まってたし。
  上昇気流が発生しやすかったのかなぁ。

  地球温暖化によるエルニーニョの多発?

  海水温も…。

  そうそう、温水域が随分と北上してるそうですしね。

  エチゼンクラゲが山ほど発生したのも、
  漁れなくなってたマイワシが今年は凄っごく大量だったらしいのも。

  カツオにマグロ…。


頭上に開けた青空を見上げ、
そこへささやかに浮かんでいた雲の形を、
そうと見たらしい紅ばらさんの呟きへ。
あらあらと口許へ手を添えて、
かわいらしいことよと、微笑んだのが赤毛のひなげしさんならば。

 「久蔵殿、実はお魚が好きだったの?」

相変わらず顎がお小さいから、
肉とか咬むのをずぼらしてるんじゃないかって、
だから貧血気味だったんじゃあって案じておりましたが。
え? あ、やっぱり。
毟る面倒もないお刺身が一番お好きだったのですね…と。
何でそうなるんだか、
えらく斜めなことを案じて差し上げていたのが、
白百合さんだったりし。


  相変わらずにマイペースなお嬢様がたみたいです。



      ◇◇◇


自然災害では防ぎようがないとはいえ、
毎年のように何かしら半端無いことが起きては、
何年もの年またぎの重大ニュースとして語られてしまうのが、
何とも遺憾な ここ近年の日本であり。
それでも“みんなで頑張ろうね”と、
各々がやれることへ少しずつでもいいからと、
コツコツと尽力し続けている民間の皆様なのに対し。
震災前から何にもちいとも進まない、
その挙句、
旧保守派による執念深いこき下ろしのみが功を奏そうとしている政府や国会は、
いい加減にしなさいと思わずにはおれないのですが
…ままそういう話は日記とかでやるとして。
(苦笑)


 『元気を出そうよ対策の一環として、
  ホテルJでも基金向けプランを作ったんですってね。』


それぞれに忙しい中、それでも、
時間が出来れば 募金活動や署名活動にも積極的に参加している彼女らで。
ただ、結構な額が自由になるお小遣いなのを、
闇雲に無尽蔵に提供するというのは、
忙しいから時間をかける支援が出来なくて御免という大人ならともかく、
体力があって思考も柔軟な自分らがやるのは、何だか底が浅い気がするのでと。
出来るだけ色んな人にも参加いただけるような活動は無いものかと、
これでも、あーでもない こーでもないと検討して来た3人娘でもあって。
五月祭の折だって、
例年どおりの催しのすぐお隣で、フリーマーケット方式のバザーを展開。
休憩所の接待役、お茶酌み娘を3人で勤め上げもした。
お忙しいからと物品だけ出品いただいたブースに関しても、
自分たちでご近所やOGの方々を訪れては
お願いしますと訴えてのご協力いただいたものばかりを扱って。
1つ1つを丁寧に、
手から手へ、気持ちも受け渡しする所存で相対しての活躍をし、
先日、その収益を関係筋へと収めたばかり。
そうこうするうち、学生としての大忙し、
夏の様々な選手権大会に向けて、地方予選が各種始まり。
学生剣道世界の鬼百合
(笑)
草野さんチの七郎次お嬢様がそちらへ没頭する一方で、
明日のバレエ界を背負って立って…と懇願されているらしい、
紅ばらさんこと、三木さんチの久蔵お嬢様も、
夏の公演各種への、レッスンなりオーディションなりが始まって。
これこそ学生の本分、定期試験があってのあわわと翻弄されたこともあり、
あらあら、それじゃあ わたしは連絡係に徹しましょうかと言いかけてた、
アメリカからの帰国子女、
ひなげしさんこと林田さんチの平八お嬢様には何と、
結構メジャーな工学世界での選手権大会、
ろぼっとコンテストへの客演招聘というお声が、
知人の某工学大生から掛かってしまったため、
そちらさんもいきなりバタバタが始まってしまった、初夏七月。
やっとのことで息がつけたのが、
終業式のあった3連休の前日というほどの彼女らで。
やれやれ やっとお休みらしい日を堪能出来ますわねと、
メールや携帯で連絡を取り合ったそのまま、

 『どこかでお顔を合わせませんこと?』
 『そうですね、夏の予定も詰めたいですし。』
 『それでは……。』

…と 久蔵が提案したのが、
夏休み恒例、
ホテルJ・レディスプラン特別コースの お試し宿泊だったりし。
女子会も流行しているその上、
OLや女子大生という やはり“女性”が、
関西や地方都市から、
高速バスや新幹線一本で遊びに来る風潮も発展中とあって。
こちら、三木さんチのコンツェルンの主柱・ホテルJでも、
毎夏企画している“レディス企画”を、
ますます充実させているのだとかで。
デラックスなお部屋にゴージャスなお食事…のみならず。
エステやジャグジー、プールにラウンジも使い放題の館内サービスをも、
今時のお嬢さんたちの目で採点してほしい…との名目で、
毎年招かれておいでの三人娘。
プールは、広大な中空階のテラスに設けられた開放的なのと、
屋上真下の、
ちょっぴりレトロなアールヌーボー調の温室を思わせる、
ガラス張りの全天候型温水のとがあり。
夏休み…と言っても、
まだまだ社会人の皆様には、本番まで あとちょっとある時期なせいか、
彼女らと同類か、学生世代だろう少女や青年の何組かが、
さわさわと軽やかなおしゃべりをしていたり、
のんびりとデッキチェアに寝そべって陽やけを堪能していたりするくらい。
呼ばれればドリンクなりタオルなりを手渡したり、
他の場所への誘導なりを担当するのだろ、
ホテル側の従業員らがバーカウンターの内に待機しちゃあいるが、

 “凄いなぁ、欠伸ひとつしないんだ。”

油断無く張り詰めているでなし、さりとて緩み切ってもなしと、
どんだけ徹底教育されたホテルマンたちなんだろかと、
こちらは素人の平八が、されど舌を巻いたほどのお行儀のよさだったりするのだが、
まま、そっちもさておいて。

 「今年は海へ行こうって、話をしていたんですよね。」
 「そうでした。」

本物の緑の茂みのところどこ、こちらは果たして天然か人造か、
シュロやナツメヤシの木が、
濃い陽差しを上手に遮っての木陰を作っているプールサイドを、
どちらも涼しげな水着姿で颯爽と歩むお三人。

 「昨年はシチさんが高校総体で沖縄に行かれたんで、
  高原で涼んだんでしたよね。」

それなり楽しかったですが、
やっぱり海にも行っておきたいとの提案をしつつ。
今年の流行、アフリカ調なんですよと、
白地にブラウンやオレンジ系の波々ストライプが可愛らしい、
ビキニ…というより2ピースタイプの水着をまとっているのは、
コケティッシュなお顔を大きく裏切る、
それはふくよかな巨乳自慢のひなげしさんで。

 「…誰が自慢にしてますか。/////////」

 「でもでも、ヘイさんたらセンスいいvv」
 「………。(頷、頷、頷)」

ヒップ回りにシャーリングタイプのフリルがぐるりとアレンジされていて、
足の付け根にかけての2段のそれが、
スカートみたいなシルエットになってるのが可愛らしい。
その上へシースルーのメッシュベストを重ねると、
ちょっとしたタウン着としても通用しそうなデザインであり。

 「シチさんこそ、色白なお肌に映えるブルーがお素敵ですよ?」
 「………vv(頷、頷、頷)」

こちらさんは、
チューブトップ風の肩出しワンピースタイプの水着を選んでいた白百合さん。
泳ぐおりにはチョーカーのように首へと引っかける、
輪になった紐が胸元に潜んでいるらしく。
それを隠すカモフラージュも兼ねているものか、
やはりシャーリングフリルがぐるりと胸元を巡っており。
脇を通っての胸回りだけ…というのじゃなく、
短い袖として左右それぞれの二の腕へまで掛かっているのが、
却ってちょっぴりセクシーな印象もする、ロマンチックなデザインだったりし。
ストレートの金の髪、今日はうなじの横手へシュシュでまとめておいでで。
長い脚したスレンダーな肢体に、細い肩と可憐な二の腕。
そこへ加えて、すんなりとしたうなじを見せる、
すっきりとまとめた様子がいや映えていて、清々しいたらなく。

 「久蔵殿だって、なかなか大胆な型ですのね。」
 「そうそう、それは私も思いましたようvv」

 「〜〜〜〜〜〜。/////////」

こちら様も、それは色白で髪も金色と、
淡い印象の強い配色の身であり。
夏の強い陽射しの下…だとはいえ、
本格的に原色だらけな南国にいるでなし。
それでと選んだものか、
深みのある真紅や緋色などなど、様々な赤の小花が散るプリント柄の、
一見ワンピース風のそれだと思えたフロントだったが。
これが背後に回ると、ウエスト部分に布がない。
バックスタイルは セパレートに見えるという、
この、華麗な見栄えにもかかわらず、
割と堅物なクールビューティさんには珍しい、
意外な大胆さで攻めて来た紅ばらさんだったので。

 「しかも、しなやかな背中がよくまあ映えてvv」
 「そうそうvv 兵庫せんせえが見たらイチコロですね。」

股上が特にハイレグだということもなく、
小ぶりなお尻を柔らかく包む、大人しめの腰回りだってのに。
それが却って、腰の線を余すことなく示しており、
大きく開いたところから覗く、
背骨に沿ったラインもしなやかな、ホクロ1つない白い白い背中の真下、
いかにスレンダーで、尚且つ形のいいお尻かがよく判るため。
変わった水着だと気がついたが最後、
え?と二度見した人は 男女を問わずのほぼ全員、
その麗しの背中から目が接がせずにいるのが、
連れとしては ただただ可笑しいばかり。

  ―― だって久蔵殿には、そんなつもりは さらさらないのにねvv

いつぞやの“ミニスカート談義”じゃあないけれど、
久蔵としては、特に人の目を集めたいと思って選んだ水着なんじゃあない。
自分のスタイルに一番フィットしていたのとそれから、
動きやすいので泳ぎやすいから…としか 考えちゃあいなかろが、

 挑発するでない、勿論媚びるでない、
 そんな無防備なところがまた、
 気づいたお人へは、
 ハッとしたそのままドキドキする加速となるらしく。

 「?」
 「ああ、いえ。シチさんといい久蔵殿といい、綺麗な御々脚だなとvv」
 「え〜? アタシは普通ですって。」

不意にお鉢が回って来たのへ慌てたか、
更衣室からそれだけ持参した小さなポーチを座面へ置いて、
腰掛けようとしていたデッキチェア。
なだらかな斜面へ延ばしかけてた足を、
あわわと白い腕で抱え込んだ白百合さんだったのへ、

「いやいやご謙遜vv」

こちらもチェアへと腰掛けたそのまま、
くすすと悪戯っぽく微笑って平八がたたみ掛け、

「勘兵衛殿あたりだと、
 他の男どもからの視線避けにって、
 引きずるような長いパレオとか付いてるのを選びそうですよね。」

かつての、知将でありながら行動力も備えた大胆不敵な壮年を思い出したか。
シチさんを独占するためならば、黙ってなんかいるものですかと、
けろりとした笑い方をしたのは…半分くらいジョークのつもりだったかららしいが。
そんなひなげしさんの前へ、
ひらんと大きく広げられたものがあり。
宙を舞った淡い影に視野を遮られたことで、
釣られて そちらを見やったひなげしさんや白百合さんが、
あれまあと表情を止めてしまったのは、

 「………。」
 「久蔵殿、それ。」
 「もしかして、兵庫せんせえが?」

どんなでっかいテーブル用のセンタークロスかと思わせるほどの、
淡色の布が、闘牛のマタドールの所作よろしく、
裳裾を華麗に広げながらも鮮やかに捌かれての末に、
くるりと久蔵殿の細腰へ巻かれたからで。

 「………。(頷、頷)」

紅ばらさんがこっくりと頷いたのは、
兵庫せんせえ こと、榊医師が用意したものかという
平八からの問いへのお返事だろう。
優雅なカットで斜めに下がった裾に細かい刺繍のほどこされたそれこそは。
冗談めかしての“ありえないもの”として持ち出した、
もしかせずとも水着用の巻きスカート、長々としたパレオであるらしく。

 「背丈のある久蔵殿でも余裕で引きずりますよね。」
 「しかも透ける生地じゃあないし。」

軽やかでないと、水辺というセッティング上 バランスが悪いせいか、
多少は…薄手のオーガンジーか更紗っぽい素材らしいものの、
肌どころか、下に覆われる格好の水着の色合いさえ透かさぬ厳重さであり。

 「案外とコンセプトは“ビーチでの結婚式”でしょかvv」
 「あ、そっか。純白ですものねぇ。」

小花のブーケを包むレースだと思やいいと、
何とも即妙に言ってのけた七郎次、
表情豊かな口許をうふふと優しい笑みにたわめて、

 「きっと、清楚で慎ましくというのが狙いでしょうか?」
 「〜〜〜。/////////」

途端に、そんなことは無い無い無いとでも言いたいか、
お耳を赤くし、結構な勢いでかぶりを振った紅ばらさんではあったけれど。

 「……判ったから落ち着いて。」
 「目が回って引っ繰り返ってしまいますよ?」

同じチェアへと移っての、並ぶように腰掛けて。
どうどうどうと、華奢な二の腕へ手を伸ばし、
引き寄せた肢体をキュッと抱き締めてやったれば、

 「〜〜〜っ。/////////」
 「シチさん、シチさん。逆効果だ、そりゃ。」

ただでさえ素肌の露出が多い懐ろへ抱き寄せられたら、
七郎次からの溺愛に慣れていても話は別で、
久蔵が真っ赤に茹だってしまいますよと、
苦笑交じりに制した平八。
そんなお嬢様たちの傍らを、
こんな都心には珍しい、尾っぽの青い小さなトンボが、
ふわり飛んで来たのは野次馬になるためか。


  いよいよの夏、始まりますよvv






   〜Fine〜  11.07.20.


 *ちょこっと間が空いてしまいましたね、すいません。
  あまりに暑くて頭が回らなかったからです。
  晩になりゃ涼しいかと思ったら、
  今度はドッと眠くなるから始末に負えん。
(う〜ん)

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